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鶴田 純久の章 お話

灰に火を盛って香を薫くのに用いる器。
陶・銅などで種々の形につくられます。
もと仏前の荘厳のためにつくられたもののようで、まず銅器において発達しました。
仏前荘厳のための薫香を供香といい、賓客を迎えるなど嗜みのそれを空蛙といい、香道が起こってのち、香を聞き分けることを聞香または翫香といいます。
したがって香炉の形態もまた型を異にします。
『香道千代の秋』には「対の香炉を賞翫とす、必焼物の香炉を用、ぬりたる木香炉、金などはもちひず」とあります。
また『骨董雑談』に「香炉多く獅子を用ふる事は典籍便覧に金貌煙を好むといふに拠るなり、貌は即ち獅子なり」云々とあるようで、『遠碧軒記』に「青磁香炉のよきころはせいの高さ二寸、径二寸八分、これが上々のころなりとぞ」とあります。
国宝青磁香炉の鏝阿寺(栃木県足利市)蔵浮牡丹香炉、円覚寺(神奈川県鎌倉市)蔵袴腰香炉は共に中国竜泉窯の所産とされます。
香炉はその形状・用法などにより柄香炉・卓香炉・袖香炉・釣香炉・被中香炉・聞香炉などの種類があります。
また著名な香炉に布袋・富士・千鳥・獅子・三足蛙・此世・多舌魚・士明・浅間などがあります。
(『和名抄』『三内口訣』『和事始』『貞丈雑記』『万宝全書』『香志』『学海余滴』『事文類聚』『懸物図説』『渡辺幸庵対話』『松屋筆記』『織田信長譜』『責而者草』『北国巡杖記』『雲萍雑誌』『浅間の記』『類聚名物考』『名物記』)

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