Covered bowl with chrysanthemum and wave design, enamelled ware
Mouth diameter 21.2cm Tokyo National Museum
高さ14.3cm 口径21.2cm 底径10.7cm
東京国立博物館
完成期の乳白手柿右衛門様式の代表的な作例であります。腰の張った鉢に、豊かな甲盛りの蓋が覆うようにかぶさり、蓋甲中央に装飾的な鈕がつけられています。蓋甲と身の外側に波濤の浮文が素地にあらわされていて、それは型抜きのようでありますが、フリーハンドで彫りつけたかと思わせるほどのびのびとしていて、しかも自由な動きがあります。この種の波濤浮文をもつ蓋物は他にいくつか見ていますが、なかではこの鉢はことに彫文様が優れ、素地もいったいに薄手でしかも勁さが感じられ、彫の深い部分は透明釉が厚くかかってわずかに青味をおびています。上絵はその波上に菊花と葉と千鳥を散らし描きしていますが、美しいです白磁を効果的に生かす配慮がうかがわれる。素地が上質ですために、上絵の赤、青、薄緑のいずれも発色が鮮やかであります。身の見込中央に飛鳳と珠を団文風に色絵であらわして、蓋裏にも色絵で折枝文を描いています。やや高い高台内ほぼ中央に、小さな目跡が一つ残っています。さらに、高台内に薄い青の上絵で、「ウ」といいます文字が小さく書かれていますが、おそらく注文先の目印でしょう。