Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話
忘水 わすれみず
忘水 わすれみず

中興名物。破風窯茶入、皆の川手。旧名白浪。忘水の銘は阿部豊後守正武の撰、引歌は『風雅集』の「人もみなむすぶ身なれど忘水我のみあかぬ心地こそすれ」。撫で肩で底がすぼみ、総体はざら目地の渋紙色で、置形は口縁から裾に至るまで粉が吹いたように黄釉が現われ、裾廻りはざら目土の上にしのぎのような竪を巡らし、細糸切が一面に磨かれている。品位はやや乏しいが景色のおもしろい茶入である。もと商人石川六兵衛所持、神若狭守紹元に伝わり名を白浪といったが、のち老中阿部豊後守の手に入り忘水と名付けられた。
その後松平左近将監乗邑に伝わり、1782年(天明二)松平不昧に納まり以来同家に相伝した。
(『名物記』『古今名物類聚』『麟鳳亀龍』『大正名器鑑』)

わすれみず 忘水

瀬戸破風窯茶入、皆の川手。
中興名物。
旧名「白浪」。
「風雅集』の「人もみなむすぶ身なれど忘水我のみあかぬ心地こそすれ」を引いて、阿部豊後守正武が命銘したといわれます。
また神尾若狭守紹元の所持の際は「白浪」ともいいました。
その後松平左近将監乗邑に伝わり、天明二年、二百五十両で松平不昧に納まりました。
撫肩で口やや開き、胴より裾にかけてややすぼんでいます。
総体にざら目地で、渋紙色の総釉の中に、口縁より裾にかけて粉が吹いたように黄釉が現われていて、置形となっています。
裾周りのざら目土の上に鎬のごとき竪をめぐらし、底は細い糸切である。
堅苦しくない面白い茶入として、茶人に愛されています。
仕覆は三枚で、緞子・金襴・ほか一枚はいずれも遠州の見立てで添えられ、よく保存されています。
また象牙蓋は三枚とも窠入りです。
『古今名物類聚』『名物記』ほか諸書に記録されており、『大円庵茶会記』には不味が文化六年に「大坂井戸」とともにこれを用いていることが記されています。
【付属物】 蓋―三 仕覆―三、遠州緞子・白茶地大牡丹古金襴・花色地一房紋金襴(図版右より) 仕覆箱-桐白木、書付阿部豊後守正武筆家―花櫚、几帳面凹、金粉字形・書付同筆 内箱―桐白木、書付同筆、蓋裏書付同筆 外箱 桐掻合塗、几帳面朱塗 銀粉字形・書付松平不昧筆
【伝来】石川六兵衛 神尾若狭守紹元―阿部豊後守正武松平左近将監乗邑―松平不昧
【寸法】 高さ:9.0 口径:3.4 胴径:6.5 底径:3.8 重さ:147

前に戻る
Facebook
Twitter
Email