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鶴田 純久の章 お話
瀬戸 灰釉瓶子
瀬戸 灰釉瓶子

Seto ware: vase, ash glaze. Excavated in the precinct of Hakusan Jinja at Nagataki, Shirotori-cho, Gifu. Date of Showa 1st year (1312). Height 30.4cm.
Registered as Important Cultural Property. Hakusan Jinja.
岐阜県郡上郡白島町長滝白山神社境内出土
正和元年(1312)
高さ30.4cm口径7.3cm 胴径19.2cm 底径12.0cm
重要文化財
白山神社
 昭和八年、越美南線の敷設工事に際して、白山神社境内の一部から出土したものであり、阿妙院址と推定されています。この瓶子はも一本の正和元年銘菓子および灰釉四耳壺とともに常滑大甕のなかに納められていたといい、大甕は幅広い口縁帯のこの時期特有のものであり、破砕して破片を残すのみです。
 この子は前者と同様、型の胴ですが、口頭部が太く、ロ縁に幅1.0cm、厚さ0.3cmの花弁状の縁帯を設けています。他の一本も同様で対をなすものですが、古瀬戸子のうちでは他に類例をみないもので、銘文からも知られるように、特別註文による製品と考えられます。
 素地は耐火度の高い良質の土を用い、水挽き成形のきわめて丁寧なつくりを示しています。肩の張りが乏しくなり、腰がやや太めになっています。焼成はやや酸化気味で、火間に赤褐色の火色がでています。灰釉は暗緑色を呈し、流条化のまだ強いものですが、肩の部分はやや厚みを増し安定した釉調を示しています。肩に刻まれた銘文はやや太い彫りで奉施入 白山權現寶前中嶋郡奧田安楽寺住阿闍梨榮秀正和元年十二月日とあります。中嶋郡奥田村はいまの稲沢市奥田で、尾張平野の中央低地帯です。
 本瓶子は鎌倉後期の古瀬戸子の基準資料として、きわめて貴重なものです。

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