交趾写荒磯文水指

交趾写荒磯文水指
Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話
交趾写荒磯文水指
交趾写荒磯文水指

Hozen: water jar in the style of kōchi ware with wave and fish design
Height 15.7cm
高さ15.7cm 口径15.6~16.2cm 底径12.9cm
 幕末京焼における、いわゆる交趾焼の写しは頴川に始まり、木米、保全がそれぞれに特色のある作品を残しています。ことに永楽保全の交趾写しは、交趾支那系の交趾焼というよりも、中国でいう法花の気分を和様化したものが多いです。したがって、そこにかけられた色釉もまことに鮮麗であり、幕末京焼の交趾写しのなかでもっとも優美なものといえます。
 口造りをきっぱりと一重口にした素直な筒形の水指ですが、胴の二方に波濤におどる鯉、すなわち荒磯文様を絞り出しの浮線であらわし、鯉には金箔下地の上に飴色に漆をかけた、漆芸の白檀塗に似た表現の技法を用い、全面に緑釉をかけていますが、その色調はまことに鮮やかなものです。平らな底には糸切の跡がくっきりと残りほぼ中央に保全常用の永楽印が捺されています。共箱に納まり、表に 「交趾焼 荒磯水指」、裏に 「保全造」 と書し、永楽の印を捺しています。明るくしかも気品のある作行きで、中国の法花を和様化した保全独特の創意がそこに示されています。

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