黒茶碗 銘ヒゝ 左入

黒茶碗 銘ヒゝ 左入
Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

Sanyu (Raku VI,1685-1739): cylindrical tea bowl, known as “Hihi”, Black Raku
Mouth diameter 9.8cm
Raku Museum
高さ 10.3cm 口径9.8cm 高台径5.8cm
樂美術館
 内箱蓋表に「楽左入町」、蓋裏に「ヒ (花押)」 と如心斎が書き付けています。もとは蓋表右上に「二百之内」とあったらしいですが、どうしたことかそれを消しています。
 左入は享保十三年、四十四歳の時剃髪し、覚々斎宗左から左の字もらって左入と号しますが、二年後に覚々斎原叟が歿し、不審庵は如心斎の代に入ります。剃髪後の左入共箱茶碗の大半が如心斎の書付であるのもそのためであり、なかでも箱の蓋表に「二百之内」 と記しまた、いわゆる左入二百の茶碗は、如心斎書付による左入茶碗の典型作で、左入晩年の技巧のすべてがそれぞれに示されているといえます。
 二百茶碗は、宗入五十歳の癸巳茶碗に因んで同じく五十歳の時に焼いたものか、あるいは元文三年元祖長次郎の百五十年忌にあたって作ったものかもしれません。そして如心斎三十歳、または三十四歳の書付ですから、書体はいかにも若々しいです。
 瀬戸黒の筒茶碗のような趣の作振りであり、また光悦茶碗とも似通っています。腰にきっかりと稜をつけた筒形で、口部にかけてわずかにすぼまっています。大振りの高台は低く、畳付幅広で、高台内の削込みは不正円形、低く渦兜巾をつけています。見込には茶溜りをつけ、内側に段をめぐらしています。総釉で、全面にかせぎみの光沢のある黒釉がずっぽりとかかっています。底部の作りが厚いためか手取りは重く、高台畳付に目跡が三つ残っています。

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