赤筒茶碗 銘福寿草 宗入

赤筒茶碗 銘福寿草 宗入
Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

Sonyü: cylindrical tea bowl, known as “Fukujusō”, Red Raku
Mouth diameter 8.5cm
Yuki Museum of Art
高さ10.0cm 口径8.5cm 高台径5.2cm
湯木美術館
 内箱蓋表に 「赤筒茶碗 楽焼 吉左衛門」 とあり、蓋裏に覚々斎原叟が「銘 福寿サウ(花押)」と書き付けています。いわゆる共箱ですが、蓋表に捺されている印が一入印であることから推しておそらく一入晩年に宗入が作り、蓋表には一入印を捺したものではないかと考えられます。一入は元禄四年、宗入二十七歳の時に隠居し、元禄九年に歿していますが、おそらくその間の作でしょう。したがって黒茶碗 銘カノコ斑の癸巳茶碗よりもかなり前の作と思われます。
 総体厚手でずんぐりとした作行きは、すでに青年期からの宗入の特色であったのでしょうか。この茶碗もかなり厚手に成形されています。裾のふくらんだ筒茶碗で、口部は例によって内に抱え、口縁はまるく緩やかに起伏しています。内側に段をつけ、見込には茶溜りを深く削り出しています。外側には幅広い縦目を二本と一本つけ、口辺も平らに鋭く目を施しています。あたかも椎茸のような大振りの高台がつき、高台内はまるく削り込み、兜巾をくっきり立てています。
 外側口部から裾にかけて大きく火変りが生じて暗緑色と朽葉色の景色をなし、他は全面、いささかざらめいた釉膚に焼き上がっていますが、釉がかりの厚い部分は白濁色を呈し、荒い貫入が生じています。
 宗入の赤筒茶碗のなかでは出色の作といえ、原叟の箱行きも優れていますが、原叟書付の横に了々斎が 「無紛也 左 (花押)」 と極め書をしています。大阪の鴻池家に伝来したものと聞いてます。

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