Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

Sōnyü (Raku V,1664-1716): shallow tea bowl, known as “Ippei”, Black Raku
Mouth diameter 14.0cm
高さ7.2cm 口径14.0cm 高台径6.0cm
 内箱蓋裏に「癸巳 一平 (花押)」 と覚々斎原叟が書き付けています。この癸巳は正徳三年にあたり、宗入五十歳の時、半白の賀の祝に黒茶碗二百個を作り、不審庵の原叟に書き付けてもらったもので、箱にはいずれも「癸巳」 の文字が書されているため癸巳茶碗、または宗入二百の茶碗とも呼んでいます。しかしそのうちいくつ現存しているか判然としません。
 宗入五十歳、半白の賀を期しての作であるだけに、もっとも宗入らしい特色の顕著な茶碗といえます。やはり一入の養子だけに、彼もまた長次郎焼を基本としつつ、彼自身の特色を姿や釉調に示しています。宗入の作振りはいったいに厚手であるのが特徴ですが、この大振りの平茶碗も厚手に作られています。内に抱え込ませた口部にはおのずからの起伏を持たせ、腰にまるみがあり、小振りで円形の高台は、畳付がやや幅広く、高台内の削込みは浅いです。高台外側のまわりをまるく取りして溝をめぐらし、また見込に浅く渦状の茶溜りがあります。総釉で、宗入独特のかせ釉がずっぽりとかかり、見ますからに重厚な趣ですが、釉はよく溶けています。高台畳付に目跡が三つ残っています。

前に戻る
Facebook
Twitter
Email