この二つの茶碗は入子の茶碗として作られたものです。赤、黒ともに薄作りで、口から腰にかけて撫四方に作られています。黒茶碗は胴の一方にいわゆる黄はげの釉がけで富士の絵をあらわし、高台とそのまわりにはざんぐりとした白土が見られます。赤茶碗は黒茶碗の中に収まるような大きさで、黒茶碗よりも薄く作られています。総体に赤土を塗り白泥で外側に茄子を、内側に鷹を描いて、透明釉をかけており、鮮やかに発色した赤と、濃い火変りの美しい茶碗で、黒赤一双で「一富士二鷹三茄子」 の初夢の図をあらわしています。
黒茶碗は高台脇に、赤茶碗は高台内の釉下にいずれも中印が捺され、慶入三十八歳から五十五歳までの作品であることがうかがわれます。
箱は、蓋裏に 「富士鷹茄子画 赤黒四方茶碗 楽吉左衛門造」 と慶入が書した共箱です。