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鶴田 純久の章 お話
黒茶碗 一空
黒茶碗 一空

Ikkü (Tamamizu II, ?-1720): tea bowl, Black Raku
Mouth diameter 9.6cm
Raku Museum
高さ7.4cm 口径9.6cm 高台径4.6cm
樂美術館
 一見、一入の朱釉黒茶碗と見まごうばかりの作振りです。しかし一入の作とくらべるとどこか固さが感じられます。ことに口造りに一入と違った手ぐせがあらわれています。総体やや厚く、口を内に抱え込ませ、胴をわずかに引き締め、腰はまるく腰高に、高台は小振りで畳付はまるく、高台内に巴の兜巾が作られています。また、見込にも茶溜りがくっきりとあらわされています。総体に黒釉がかかり、鮮やかに朱釉があらわれ、特に幕釉の釉切れには朱釉が帯状にあらわれています。朱釉の発色も一入のそれと比べますと、赤の色調がやや強いようです。高台畳付には目跡が三つ残っています。内箱蓋表に「黒茶碗 兄弥兵衛作」、裏に 「黒茶わん 兄弥兵衛作 任 (花押)」と玉水焼三代の任土斎が書付をしています。したがってこの作者は、一元と称されているが一元ではなく、任土斎の兄、すなわちー空弥兵衛と推測されます。一空弥兵衛は一元の長男で、二十二歳で歿したがなかなか巧みな作者であったと推測され、この種の玉水焼一元、一空などの朱釉茶碗が、一入の作として多く伝世しているようです。

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