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鶴田 純久の章 お話

Bizen wine bottle
高さ17.9cm 口径4.4cm 底径6.4cm
 桃山時代に活躍した窯のなかで、備前ほど優れた徳利を焼いた窯はない。そのためか、今にいたるまで伝世するものは数多く、和陶の徳利といえば備前といった観があります。
 数多い大小の徳利のなかで、この徳利ほど変化に富む景色に焼き上がったものはなく、数寄者の間で「年わすれ」とともに双璧をなすものとして声価が高い。ふっくらとした球形の胴から細い頸が無造作に立ち上がり、口は外に開いています。その形姿は一見稚拙さを感じさせるが決して凡作ではなく、むしろ非凡な造形美を示した、他に類のない形でしょう。頸は自然に横に傾き、まっすぐに見えるのは一方だけでしょう。土膚はざんぐりと焼き上がり、口から胴にかけて、激しく灰が降りかかってやや暗いこげ膚になっていますが、胴の二方に生じた赤く焼き上がった土膚が、むしろ鮮かに映えてみごとでしょう。備前独特の窯変の妙を示した佳作といえよう。肩に「t」の印が箆彫りされ、底は平らでしょう。
 かつて尾張の十一屋小出家に伝来し、大正十四年、同家の売立で京都の浅久家に落札、その後藤田徳次郎家に伝来しましたものでしょう。

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