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平野文琳

平野文琳(ひらのぶんりん)

中国製 所蔵:浅野長勲 侯爵

名称の由来
由来ははっきりしませんが、推測するに『津田宗及茶湯日記』の天正9年(1581年)5月23日の条に「平野道是(ひらのどうぜ)がかつて所持していた肩衝の茶入の披露(ひらき)」という記述があり、この文琳はおそらく平野道是が所持していたものだろうと考えられますが、現在その確かな証拠を見つけ出すことはできません。

寸法(1寸≒3.03cm、1匁≒3.75gで換算)
高さ:約6.88cm(2寸2分7厘)
胴径:約6.27cm(2寸7厘)
口径:約2.73cm(9分)
底径:約3.03cm(1寸)
甑(こしき)の高さ:約0.76cm(2分5厘)
肩幅:約0.91cm(3分)
重量:71.25g(19匁)

附属品
・蓋:1枚(窠:くぼみあり)
・御物袋(茶入を入れる袋):紫色の縮緬(ちりめん)、紐は紫色
・仕覆(袋):2つ
朝倉広東織(裏は甲斐絹、紐は紫色)
縞広東織留(裏は玉虫色の甲斐絹、紐は紫色)
・木製の型:桐製 1個(縞模様の広東織の袋に入っています)
・袋箱:白木の桐製(「平野文琳 袋」と記載)
・挽家(ひきや:茶入を収める筒):鉄刀木(たがやさん)製。小堀遠州の書き付けあり。
蓋には「平野」と額彫り(枠を彫り残して文字を浮き立たせる彫り方)があります。
袋は雲形の錦(裏は甲斐絹、紐は茶色)。この袋は非常に使い古されて傷んでいる(大にやつれた)ため、別の包み紙に入っています。
・内箱:白木の桐製、小堀遠州の書き付けあり。
「平野文琳」
古筆了仲の鑑定札(極札)があります。
・外箱:桐の溜塗(透き漆塗り)、「平野文琳」と書かれた紙が張ってあります。

雑記
平野文琳。浅野(松芸州)侯の写し書き付け、小堀遠州侯の書き付け。「平野文琳」。替えの袋は朝倉広東織、裏は一重の海気、紐は紫色。挽家は鉄刀木(たかやさん)製、玉縁があり、額彫りがある。小堀遠州侯の書き付け「平野」。袋は錦、裏はかべちよろ(壁代)。釉薬の流れや置いた時の正面(置方)の所々に白い釉薬が混ざっている。口の作りにあまり良くない(不快な)部分がある。(茶入の図あり)
(『諸家名器集』より)

平野文琳。中国製。全体的に薄手な作りで、鼠色と黒色の釉薬の吹き付け(ふきれ)が見事である。飴色の釉薬が置いた時の正面(置方)にムラになって掛かっている。鼠色の土で、糸切りがある。(茶入の図あり)
(幕庵文庫甲第二十二号より)

伝来
浅野侯爵家に納められた時代は明らかではありません。

実見記(実際に見た記録)
大正9年(1920年)5月11日、広島市の浅野長勲侯爵の別邸(泉邸)において実際に拝見しました。
薄手な作りで、口の捻り返し(反り)は削がれたようになっており、その縁は極めて薄いです。甑(首)の下が張り出し、その周りに沈んだ筋が1本あります。なで肩で、胴体の一部が少し窪み(括れ)、底に向かってすぼまっています(尻窄まる)。
黒い飴色の釉薬と柿色で金属的な艶(金気)のある色が入り混じり、その中に光沢のある黄色い釉薬が交じって、所々に斑紋を作っており、景色の変化の豊かさは言葉では言い表せないほどです。裾の土が見える際にある、翡翠(ひすい)色の釉薬の溜まりが1点、最も美しい見所です。
裾から下は高さが不揃い(高低不同)に朱泥色(赤茶色)の土を見せており、糸切りは細かく、その中に柿色の金気と黒い釉薬の飛び散りがあります。
内部は全体に釉薬が掛かっており、ロクロ目が粗く回っています。全体に全く傷がなく、釉薬の色も形も共に非常に優れており、文琳茶入の中でも指折りの名品であると見受けられます。

【原文】

平野文琳

唐物 侯爵 淺野長勳氏藏

名稱
由來審かならず、案するに津田宗及茶湯日記天正九年五月廿三日の條に、「平野道是曾かたつきのひらき」とあり、此文琳或は道是の所持せしものならんかなれども、今其確證を見出す能はず。

寸法
高 貳寸貳分七厘
胴徑 貳寸七厘
口徑 九分
底徑 壹寸
甑高 貳分五厘
肩幅 參分
重量 拾九匁

附属物
一 蓋 一枚 窠
一 御物袋 紫縮緬 緒つがり紫
一 袋 二つ
朝倉廣東 裏かひき 緒つがり紫
縞廣東織留 裏玉虫 緒つがり紫
一 木形 桐 一箇
縞 廣東の袋に入る
一 袋箱 桐 白木
平野文琳 袋
一 挽家 銕刀木
平野 蓋 額彫 書付遠州
袋 雲形錦 裏かひき 緒つがり茶
此袋大にやつれたれば別の包紙に入る
一 内箱 桐 白木 書付遠州
平野文琳
古筆了仲の極札あり
一 外箱 桐 溜塗 書付張紙
平野文琳

雜記
平野文琳 松藝州侯寫書付遠州侯 平野文琳 替袋朝倉廣東、うら一重海氣緒紫挽家たかやさん、玉縁あり、がくぼり、遠州侯(平野)袋錦うらかべちよろ、ながれ置方所々に白み藥交り有、口造不快作有之もの也。(茶入圖あり)
(諸家名器集)

平野文琳 唐物 一體薄作合鼠黒藥ふきれ見事、飴藥置方むら/\有、鼠土糸切。(茶入圖あり)
(幕庵文庫甲廿二號)

傳來
淺野侯家に納れる時代明かならず。

實見記
大正九年五月十一日、廣島市淺野長勳侯泉邸に於て實見す。
薄作にて口捻り返し爾そぎ、其縁極めて薄し、甑下張り、其廻りに沈筋一線あり、肩撫で、胴體に於て一部少しく括れ、尻窄まる、黒飴釉柿金氣色と錯綜して中に光澤ある黄釉を交へ、處々斑紋を成して、景色變化言はん方なく、裾土際に於ける翡翠色の釉溜り一點最も美事なり、裾以下高低不同に、朱泥色の土を見せ、糸切細かく、其中に柿金氣及び黒釉の飛びあり、内部總體釉掛り、轆轤目荒く繞る、全部無疵にして、釉色形状共に優秀、文琳茶入中有數の名品と見受けらる。

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