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八重樱大海

八重桜大海(やえざくらたいかい)

漢作(中国製) 大阪 藤田彦三郎氏 蔵

名称
『宗友記』に「八重桜、この大海は南都(奈良)から出たとのことで、『いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に 匂ひぬるかな』の歌にちなむ」とある。古瀬戸にも「八重桜大海」というものがあり、『宗友記』がどちらを指しているかは不明だが、その名称の由来は同じであろう。

寸法
高さ: 約7.12センチ
胴径: 約10.76センチ
口径: 約6.06センチ
底径: 約5.15センチ
甑(こしき)の高さ: 約1.06センチ または 約1.09センチ
肩幅: 約0.76センチ
重量: 約182.6グラム

付属物
一 蓋: 1枚、巣(くぼみ)なし
一 袋: 2つ
吉野広東(かんとう)、裏は玉虫、緒は茶のつがり結び
柴田緞子、裏は玉虫、緒は紫の長緒
一 袋箱: 桐、白木
「漢大海 袋吉野広東」
一 挽家(ひきや): 黒塗、金粉で字形あり
袋: 紫の革
一 内箱: 黒柿、蓋の裏は金地色紙の中張紙、小堀遠州の書付あり
金地色紙に「八重櫻」
一 外箱: 桐、春慶塗

実見記
大正9年(1920年)5月14日、大阪市網島の藤田彦三郎氏邸において実見した。
口作りは薄手で捻り返しが深く、甑(こしき)の下が張り、その周囲に黒い筋が一本巡っている。肩はくっきりと張って胴が張り、裾はすぼまっている。全体的に紫釉と柿のような赤み(柿金気)の中間くらいの色合いで光沢が美しく、置形(なだれ)は肩先の双方から黒釉が落ち合い、胴の沈み筋の所で合わさって、そこから一本のなだれとなって裾に至って止まっている。口縁から腰のあたりまで稲妻状になった細いひび(貫入)があり、地色が薄いことに加えて黒釉が美しいため、置形が極めて鮮明である。裾から下は鉄のような色(鉄気色)の土を見せ、底の周りに釉薬の飛び(飛釉)が点在し、板起こし(底の作り方)で底面は凸凹(いちいち)している。内部は口縁に釉薬が掛かり、それより下は轆轤目(ろくろめ)が浅く巡り、底の中央に至って渦状になっている。土はやや粗く、鉄のような色を現している。薄手で作行きが精巧である上に、景色もまた見事であるため、「八重桜」の銘はその茶入が奈良から出たということだけでなく、おそらくその豊かで美しい艶(穠艶)を形容した意味もあるのだろうと思われる。

【原文】

八重櫻大海

漢作 大阪 藤田彦三郎氏 藏

名稱
宗友記に「八重櫻、此大海南都より出たるよし、いによしへのならの都の八重櫻けふ九重に匂ひぬるかな」とあり、古瀬戸にも八重櫻大海と云ふあり、宗友記は何れを指せしや不明なれども、其名稱の由來は同一なるべし。

寸法
高 貳寸參分五厘
胴徑 參寸五分五厘
口徑 貳寸
底徑 壹寸七分
甑高 參分五厘又參分六厘
肩幅 貳分五厘
重量 四拾八匁七分

附屬物
一 蓋 一枚 窠なし
一 袋 二ツ
吉野廣東 裏玉虫 緒つがり茶
柴田純子 裏玉虫 緒紫長緒
一 袋箱 桐 白木
漢大海 袋吉野漢渡
一 挽家 黑塗 金粉字形
八重櫻
袋 紫革
一 内箱 黑柿 蓋裏金地色紙の中張紙 書付遠州
金地色紙
八重櫻
一 外箱 桐 春慶塗

實見記
大正九年五月十四日、大阪市網島藤田彦三郎氏邸に於て實見す。
口作薄手にて捻り返し深く、甑下張り其周圍に黑筋一線を繞らし、肩キッカリとして胴張り、裾窄まる、總體紫釉と柿金氣色との間色にして光澤麗しく、置形肩先双方より黑釉落合ひ胴沈筋の處に於て相合し、夫れより一筋ナダレとなりて裾に至りて止まる、口縁より腰の邊まで稲妻状を成したる細きヒゞキあり、地色薄きに加へて黑釉麗しきが爲め、置形極めて鮮明なり、裾以下銕氣色の土を見せ、底廻りに飛釉散點し、板起しにて底面いち/\あり。内部口縁釉掛り、以下轆轤目淺く繞り、底中央に至りて渦状を成し、土稍荒く、銕氣色を現はす、薄手にて作行精巧なるに、景色も亦美事なれば、八重櫻の銘は其奈良より出でたりと云ふのみならず、蓋し其穠艶を形容したる意味あるべしと思はる。

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