色鍋島 色絵 茶摘み文 釜

色鍋島 色絵 茶摘み文 釜
Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

Kettle with design of women picking up young tea leaves.enamelled ware
高さ17.5cm 胴径24.6cm
 色絵磁器の茶の湯釜。これも他に例を見ない珍器であり、しかも色絵鍋島ならではの気品をそなえた名作です。
 真形釜を倣った端正な姿の釜だが甑がなく、胴の左右に鬼面の釧付をつけ、胴裾に羽をめぐらしています。成形は胴と底部に分けて轆轤引きした後、羽を境に合わせていますが、茶の湯釜だけに総体やや厚手に作られています。底回りを残して内外全面にほのかに青味をおびた透明釉がかかり、釉膚は滑らかです。露胎の底には五十四個の小さな針積みの目跡が円形状に残っており、歪みのでないように丁寧に焼造されたものであることをうかがわせます。
 胴の表に、色絵と染付の線描きで、茶の木と茶の葉を摘む婦人二人と童女、染付のだみ筆で雲と土城をあらわし、裏面には茶の木と雲のみを同じくあらわしています。鍋島の色絵は染付で色文様の骨描きをしているのが通例ですが、この釜の絵付はそれが見あたらぬようです。しかし、里で茶摘みをする風情をこれほど典雅に色絵上絵付で描いているのは、やはり鍋島ならではのものであり、婦人の輪郭や帯に金泥をさし、薄緑を主体にした上絵付の配色、絵付ともに妙を得ています。おそらく、これも特別に調整されたものでしょうが. もとは蓋も添い、あるいは風炉とともに一具として作られたものかもしれません。底の作りから推して、大川内窯の製であることは確かであり、おそらく元禄以前の作でしょう。

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