釉・上釉・上薬 うわぐすり

marusankakusikaku
Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

釉とは、素地中に水その他の液体を吸収浸透させないため、または装飾のために、陶磁器の表面に被覆されたガラス質の薄層をいいます。
「成分」釉の成分は磁器と炻器とあるいは陶器とで異なるだけでなく、磁器釉・陶器釉の中でもまた大差があって一定ではないようです。
とはいえいずれも一種のガラスで、主として珪酸塩化合物であり、これに多少の硼酸化合物を混合する場合もあります。
すなわち珪酸は釉薬中最も主要な成分で、その含有量も多いものは758Iセ。
ントに達するものかあります。
そして含有量が多くなるに従って釉の熔融性が増大します。
硼酸は珪酸よりも易熔性で、火度の弱い釉中に混有するだけであり、その含有量は通常多くてもI〇パーセント以下とします。
塩基の最も普通のものはアルカリ・石灰・酸化鉛および磐土(アルミナ)で、その他苦土(マグネシヤ)・重土(酸化バリウム)・酸化錫・酸化亜鉛・酸化蒼鉛・酸化アンチモ二ーなどがあります。
なお色釉中には着色料として種々の金属化合物を混有しています。
【種類および名称】釉の種類および名称には、陶磁器の種類から磁器釉・炻器釉・陶器釉があります。
使用原料からは長石釉・アルカリ釉・石灰釉・イス灰釉・食塩釉・鉛釉・亜鉛釉などがあり、また釉の色合いその他の状態から白釉・色釉(青磁釉・瑠璃釉・黒釉)・結晶釉・揮発釉・雪崩釉・流れ釉・艶無釉・辰砂釉・海鼠釉・茶金釉などがあります。
その他製造地・製造者・考案者などにより随意に名称を付けたものかあるため、その数は非常に多く数えきれないようです。
普通のものは各頃目で説明しているので参照。
「原料」原料中最も主要なものは珪酸で、石英または珪酸質岩石を使用する・石英には塊状のものと砂状のものがあり、珪酸質岩石には長石・ベグマナイト・花崗岩・石英粗面岩その他の岩石があります。
アルミナもまた長石その他の岩石から出ます。
アルカリ中には長石その他の岩石から出るものがあり、また硝石・炭酸カリ・炭酸ソーダ・硼砂などから出るものもあります。
石灰は石灰石・大理石・白聖あるいは木灰などから出、鉛は主として鉛丹・密陀僧・唐土の形で使用されます。
「調整」原料中に水に対し溶解性のものが含まれていない時は、これを秤量調合して粉砕細磨するか、またはわが国従来の磁器釉のように、原料を各個に粉砕水簸したものを調合し、これを臼磨するかあるいは臼磨しないでただちに使用します。
溶解性原料を含有する時は、必ず最初にこれを珪酸その他の原料と共に加熱熔融して、不溶性の物体すなわち白玉にすることが必要であります。
陶器釉の多くはこの方法によって調整されたものであります。
釉の粉砕には種々の粉砕器が使用されていますが、現在はトロンメル(球日)が最も多く使われています。
[施釉]施釉は一般に水を混加して漿状にして行いました。
その方法には浸し掛け法・流し掛け法・塗布法・吹き掛け法などがあります。
流し掛け法は器物面に釉漿を注流するもので、浸し掛け法を行えない器物あるいは色釉の掛分けなどに用い、塗布法は筆または刷毛で釉漿を器面に塗布する方法で、主として色釉の塗布に用います。
吹き掛け法は釉漿を霧吹器で器面に吹き掛けるもので、浸し掛け法を行えない大器の施釉または41掛けをするのに用いられます。
この方法は中国で昔から行われたが拙劣でありました。
近来ヨーロッパでは精巧な霧吹器を利用しています。
他に揮発法(「揮発釉」の項参照)があります。
(『北村弥一郎窯業全集』)

前に戻る
Facebook
Twitter
Email