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鶴田 純久の章 お話
常滑 広口瓶
常滑 広口瓶

Tokoname ware: wide-mouth jar. Excavated from old ceramic kiln at Hibarayama, Saburōdani, Tokoname-shi, Aichi. 12th century. Height 26.5cm.
愛知県常滑市西阿野字三郎谷檜原山古窯出土
12世紀
高さ26.5cm 口径18.0cm 胴径17.5cm 底径9.7cm
常滑市立陶芸研究所
 初期常滑陶のうちにのみみられるこの広口瓶は、さきの水瓶とともに猿投窯灰釉陶の伝統を最もよくひいている器形の一つです。
 灰釉陶最末期のそれは口頸部と肩を二段接ぎにし、その境が明瞭ですが、常滑に移ったそれは肩から口頸部へなだらかな線を描いてひと続きにつくられています。また前者が水挽き轆轤成形であるのに対して、知多半島中央部に進出した初期常滑陶は本器のように、紐土巻き上げ成形で、器壁も厚く、形がくずれています。小石を含んだ、耐火度の高い白色の陶土を用い、還元焰で焼かれています。焼成はきわめてよく、肩に黄緑色の自然釉がかかっています。ところどころ長石の吹き出しもみられ、常滑独特の白土系統の土味をみせています。
 この広口瓶はほぼ12世紀一杯でなくなりますが、本器はその終りに近いころの作品でしょう。比較的数の少ないものです。

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