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鶴田 純久の章 お話
常滑 水瓶
常滑 水瓶

Tokoname ware: bottle vase. Excavated from old ceramic kiln site at Nishi-Shiinokiyama, Handa-shi, Aichi. 12th century. Height 27.3cm.
愛知県半田市板山町西椎ノ木山古窯跡出土
12世紀
高さ27.3cm 口径6.9cm 胴径16.0cm 底径6.5cm
 初期の常滑陶は前代の猿投窯灰釉陶器の伝統を最もよくうけ継いでいます。その最も代表的なものがこの水瓶です。細くすんなりと伸びた口頸部、高台がなくなって平底に変化しているとはいえ、肩の張った卵形の胴は奈良時代末以来の水瓶の姿をよく残しています。
 口頸部と肩の接ぎ目に一段の突帯をつける手法はすでに灰釉陶最末期から始まっていますが、12世紀の前半代に壺 瓶などに広汎に採用されています。突帯と肩の境に刻線をめぐらすのも初期常滑の特色の一つです。鉄分の多い、やや耐火度の低い土を用い、酸化焰で焼かれていて、全体に少し焼き歪んでいます。焼成はきわめて良く、ロ頸部の一部および肩の全面に緑褐色の釉がかかり、胴下半に流下してこの水瓶をひきたたせています。初期常滑にはまだ灰釉を施す技法が残っており、この水瓶の灰釉が自然釉か人工釉か検討を要する点でしょう。いずれにせよ、初期常滑陶のなかで最も美しい姿をした代表的な作品です。

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