これらの色鍋島五寸皿は、やはり立上りの浅い古鍋島様式の皿である。すべてが南川原時代の作といえるかどうかは判然としないが、『鍋島藩窯の研究』によると、大川内の窯跡からこの種の浅い木盃形皿の破片は出土していないらしいので、やはり南川原の藩窯と見るべきなのではなかろうか。
色絵雪持笹文皿の雪持笹に菊をあしらった図の皿は、ほかに例を見ない絵文様で、この種の五寸皿の珍器といえる。緑の絵具が鍋島らしいさわやかな発色である。裏文様は、牡丹を三方に配した古調の唐草がめぐらされている。
色絵枝垂桜文皿は薄瑠璃ぼかし地に枝垂桜をあらわした皿だが、緑の絵具がややにえて発色が悪い。しかし古鍋島としては他に例を見ない図柄であり、裏文様は五弁の花を六方に配した唐草をめぐらし、高台には、古鍋島特有のハート形を二段に配した連続文をめぐらしている。
色絵柳燕文皿は二羽の飛燕に柳をあしらった図があらわされている。飛燕の線描きはやや筆太で、なかなか力がこもっている。染だみの下には鍋島独特の骨描きはされていない。前図と同じく緑の上絵は発色が悪く、一部赤く窯変している。裏文様はなく、表から連続させて柳の葉が薄くあらわされている。これも類を見ない作品である。
色絵牡丹唐草文皿は、鍋島独特の様式化された花唐草がめぐらされ、縁回りは濃い瑠璃地にしている。器形は浅く平らな古鍋島風であるが、裏面の三方にあらわされた牡丹の唐草は、他の古鍋島様とは違って平凡である。
色絵菊唐草文皿は八輪の花文を配し、それらを唐草でつないだ意匠は鍋島独特のものである。上絵の色調は全体に濃く傅彩されている。裏文様は古鍋島典型の牡丹折枝文が三方に配され、高台には第97図と同じようにハート形文がめぐらされている。