伝紀貫之筆。
重文。
『深養父集』断簡。
深養父・元方・是則・興風・兼輔・公忠の歌集の断簡が知られ、『兼輔集』は『堤中納言集』として、もとの胡蝶装の冊子本が巻子本に改装され秩父宮家に秘蔵されている。
この断簡は『深養父集』秋部の題目を含む巻頭部分で、その筆意に多少の覇気がみえるが、流麗な女性的運筆に典雅な趣が加わった書といえる。
「高野切」第二種の系統をひく書風であるが、時代的にはやや下がると考えられる。
料紙は鳥の子で飛雲があり、もとは二半切と呼ぶ大形の糸綴冊子本であった。
なお『堤中納言集』の奥書には烏丸光広が高野山文珠院に貫之と称する類本のあることを記している。
【寸法】本紙縦26.3 横29.0