藤原基俊筆。『新撰朗詠集』巻上九月尽断簡(国宝手鑑『藻塩草』)。鳥の子の料紙に全面に金銀の切箔を撒き、銀泥で蝶・小禽・草花を描いた巻子本の断簡である。「山名切」の名称の由来は山名家伝来のためと思われるが詳しいことはわからない。『新撰朗詠集』は藤原基俊が公任撰の『和漢朗詠集』に倣って撰した朗詠集であるから、この「山名切」が自筆自撰の原本といえる。永久四年(1116)十月訓点を加えた旨の奥書のある「多賀切」(和漢朗詠集切)と同筆と認められる。なお基俊は従五位上左衛門佐であったが、むしろ歌学者として重んぜられた。【寸法】本紙縦26.8 横9.3【所蔵】京都国立博物館