Dish with peach design. enamelled ware
高さ8.0cm 口径31.7cm 高台径15.3cm
器形は前図とほぼ同様にやや深い立上りですが、いささか曲線の張りが弱いです。しかし、これも色絵鍋島の精緻な技巧を遺憾なく示した名作です。
葉をあしらった桃果三つを大きく配し、上に花開いた桃樹を描いていますが、中国清朝の五彩や粉彩にも見える典型的な吉祥図様です。藩主が、桃を仙果とした西王母の故事をことに好んだのか、大河内の作品には桃果図のものが多く、しかもいずれも優品であるのは興味深いです。赤で縁どりした白い桃花を浮き立たせるためか、すべて染付の薄だみで地を塗りつぶし、葉は下に骨描きをつけずに一筆描きで描いています。桃果は染だみでほのかに陰影をつけ、赤い線で縁どり、左右の二個には細かい点斑を無数に打って赤味をつけています。聞くところではこの点描は極めて難しいものであるらしいです。
皿の縁を白くくっきりと残しているのも鍋島らしい配慮であり、外側には三輪の花をもつ牡丹の折枝文をのびやかに三方に配し、畳付にかけてややすぼまった高台側面には七宝繋文をめぐらしています。
染付の焼き上がりは特に良好であり、大皿としては前図に次ぐ優作と思われます。