釉下に鉄絵の諸色飛斑文のある青磁をいいます。
古来わが国ではなはだしく尊ばれたもので、伝世品はわずかにすぎないようです。
釉・胎ともに砧青磁に近似しているがいくぶんか相違があります。
色はやや緑がかり透度が高く、胎質はさらにきめ細かで作りはていねいであります。
飛斑文は人為的に施したもので自然に生じたものではないようです。
また一説に釉禿(ちぢれ)を繕うため鉄釉をここに埋め再び窯に入れたものであるといいますが、それらしい形跡は見当たらないようです。
この種の飛青磁は中国竜泉窯で元の頃からつくられたとみなされます。
顧氏の二字刻印のある飛青磁は、明代正統年間(1436-49)の竜泉の名工顧仕成の作ではないかといわれますが、名物手の飛青磁はこの顧氏印のものとは釉・胎・作行ともに多少相違があるようで、もっと古い感じがあります。
おそらく飛青磁はある時代に限られたものではなく、元より明を通じて好んでつくられた一様式であるでしょう。
(『支那青磁考』)