タイ国は安南と共に中国の影響下に独自の陶磁を産出した数少ない東南アジアの国で、その窯業は二一九四年ソムデット一バロムチャ王が中国から連れ帰った陶工によって始められたと推定されています。
窯はソコタイ、ガロン、スワンカロ一ク、サッカナライにあったようで、わが国では宋胡録と呼んでいるスワンカロ一クのものが古くからなじまれています。
その陶磁の種類はほぽ次の四つに分かれる。
(一)青磁灰色の半磁胎に青磁釉を掛けたもので俗に宋胡録青磁と呼んでいます。
釉はガラス分の多い緑がかったもので、厚く掛かるため貫大が多いようです。
径三〇センチ程の平鉢が多く、壺・鉢・瓶・碗・合子・盃などがかなり大量につくられたようで、国内だけでなくインドネシア方面にも輸出されたらしい。
釉質・作風からいって中国南宋の竜泉窯を写したものと考えられ、十三、四世紀の作と推定されています。
青磁の産地はスワン、カロ一クだけに限られているようであります。
(二)黒釉すべての窯で産した最も普遍的なやきもので、鉄釉により黒または飴色の肌を呈します。
大きな甕・壺・瓶・鉢・碗・盃・蓋物など日用の食器類が多く、釉下に刻文を持つものもあります。
(三)白濁釉わが国で萩釉と呼んでいる燐酸による失透性白濁釉を掛けたもので、器種は前二類とほぼ等しい。
(四)白地鉄絵いわゆる宋胡録として親しまれているもので、鉄砂でこまかな唐草文や格子文を描き、上に白濁気味の灰釉を掛ける。
器形としては蓋物が最も多く、小瓶・ケンティ形水注・鉢・皿などがあります。
スワンカロ一ク窯のものが最も多く整ってもいますが、ソコタイの絵高麗風に魚文を描き付けたものも名高い。