筆冲ともいい筆を入れる器。
硯滴と共に書斎における装飾ともされ、形・文様に意匠を凝らしたものが多いようです。
中国清朝康煕(1662-1722)の大筆筒は円筒形で大きく美しく、描かれた花彩は大物が最もすぐれ草花がこれに次いでいます。
また詩賦を書いたものは豊かな別の趣があります。
筆筒の彫甕は好んで象牙や竹木に倣った釉を施しています。
彫る模様は竹林の七賢・東彼の赤壁・垂楊洗馬の類が多いようです。
名工の陳国治・王炳栄ははなはだこの製法に長じていました。
また一種の彫甕で全然釉を塗らないものがあるようで、明時代これを反甕と呼び多くは李裕元の製作といいます。
反甕で墨彩を施したものももちろんあるようで、反甕で厨脂水の彩色のものは極めて珍しい宝器であります。
乾隆年代(1736-95)の小筆筒は好んで海巣形や方形につくり窓絵にすることが最も多いようです。
その地は古代錦の鳳凰の文様で飾ることがあります。
質はこまやかで画は繊細、小品といっても十分珍重に値します。
(『匋雅』『飲流斎説甕』)