化粧土。
イギリス一ドイツ一フランス共通の語。
ドイツではÜberzugともいいます。
化粧掛けをすることを「エンゴ一ベをする」といいます。
陶磁器をつくりますのに、焼き上げのあと外観が白色にならない土を用いることがあり、このような場合には外観を白くみせるために素地の表面に薄く白色の陶土を掛けます。
白陶土を掛けるには、器物を白陶土の液に浸漬するかまたは塗抹するかで、便宜な方法に従います。
化粧掛けを行ったあとで施釉し焼成します。
化粧掛けをするのは必ずしも白色陶土に限らず、ロ一マ人が用いたテラ一シギラタなどは焼成後に赤諸色になる粘土を化粧掛けしました。
また器物の素地が粗く表面が滑らかでない場合にも、表面を平滑にするために化粧掛けを行いました。
化粧掛けをする時にその層が薄ければ目的に適わず、厚ければ釉ひびを生ずることがあります。
わが国では俗に白絵土と称する可塑性の少ない白色の耐火粘土を用います。
化粧掛けを行う技術は非常に古くからあります。
エジプトでは施釉を行うことを知ると同時に化粧掛けをすることを知ったのではないかと思われます。
もしそうだとするとエジプトの施釉した器物は紀元前数千年の昔にあったといわれますから、その淵源は実に遠いです。
一説にエジプトで化粧掛けを知ったのはロ一マ人の侵入後に習ったものだといいますが、必ずしもそうではなくてもっと古いと思われます。
珪岩に施釉したものがエジプトでは最も古い品であるといわれますが、これもまた表面に化粧掛けを行ったあとに施釉したもののように思えます。
エジプト陶器の化粧掛けは古くは珪石の粉末でしたといいます。
紀元前六百年代バビロ二アのネブカドネザル王時代の鉛釉を掛けた色煉瓦には、化粧掛けが行われています。
中国の陶磁では俗に漢陶と称する緑甕に、また唐三彩に、また中国北方の器物例えば定窯・磁州窯の器物に化粧掛けが行われています。
いわゆる中国南方窯ではほとんど化粧掛けを行っていないようです。
朝鮮の刷毛目などは、化粧掛け層の不完全から起こる一種の文様であります。
わが国の陶磁でも中国の陶磁でも、化粧掛け層を応用して文様を付けたものが少なくないようです。
先史時代土器のエンゴ一ベについては土器調整法参照。
(中尾万三)