Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話
伊賀耳付花入
伊賀耳付花入

FIowervase with two handles Height 26.7cm

高さ26.7cm 口径13.6cm 底径10.2cm
 伊賀焼としては他に例をみない器形で、純然とした仏花器形に成形されています。類の左右に蕨のような耳をつけ、正面に灰が薄くかかって草緑色の釉膚をなし、背面は赤く焼き締まって長石粒が散在しています。珍しいことに底に花押が箆彫りされていますが、その花押は天正十三年から慶長十三年にかけて伊賀の領主であった筒井定次の花押と極めて類似していて、おそらく定次の花押と認めてもよいものと思われる。定次の居城であった伊賀上野城内に伊賀焼を焼いた窯があったようであるが、この仏花器形花入に領主であった定次の花押があることは、城内での窯焼を記念しての作品ではなかったかと推測される。作振りも伊貿焼としては信楽に近い焼き上がりで、おそらく初期のもののように思われる。また、内箱の蓋裏に「利休所持神楽(信楽)花人」と表千家五世随流斎宗佐が書付していますが、利休が所持していたとすれば、なおさら興味深い作品であります。
茶陶として見るよりも、そうした伊賀焼の資料として貴重なものと思われる。

前に戻る
Facebook
Twitter
Email