これらも渋右衛門手の柿鍋調の作例であります。図154は見込に柑橘の折枝を描き、二方に菊唐草、他の二方には菱畳文を地文様にして、窓抜きの唐草文をあらわしています。図155は赤円窓内に双鳳文を描き、低く立ち上がった内側に丸文を配した八角形の小皿であります。外側には太々と唐草がめぐらされ、高台内に角福の銘が書され、目跡が三個残っています。図156は見込や縁に唐花文などをあらわし、外側には宝尽文をめぐらし、高台内に角福の銘があります。図157は小品ながら柿右衛門様式染付の秀作で、染付の表現は鍋島に勝るとも劣らぬものがあります。見込四方には鳳凰丸文を配し、内外側面には花弁文を、縁まわりには蛸唐草をめぐらしています。高台内に目跡が一つあります。
図158は左右に州浜形の透しを付けた舟形長方の皿で、用途は判然としませんが、やはり食器として生まれたものでしょう。内外側に染だみ地に花唐草をあらわしていますが、まことに優美な柿鍋手の作品であります。高台に小さい目跡が一つ残っています。