Large dish with landscape design, enamelled ware
Mouth diameter 32.8cm Nakamura Kinen-kan Museum, Kanazawa city
高さ7.0cm 口径32.8cm 底径19.3cm 金沢市立中村記念美術館
古九谷様式のなかには、明時代末期崇禎年間頃に、わが国からの注文によって焼造されたと考えられる祥瑞染付の影響の顕著な作例があります。祥瑞の典型的な文様といわれています丸文をあらわしたもので、この深鉢はそうした祥瑞手ともいえる古九谷様式の代表作であります。口縁を輪花に削り込み、口紅にしています。見込中央には、家屋を近景に山水図を描いていますが、遠景に三艘の帆掛舟が点じられています。その内側に十八個の丸文を染付であらわし、上に色絵を点じて文様を構成しています。このように文様の表現に染付と色絵を併用する例は、古九谷様式のなかでは祥瑞手に限られています。見込の図柄は、他の古九谷様式と同じく強い色調の絵具であらわされていますが、丸文は染付の色が淡く、また色絵もそれほど強い色調のものではありません。丸文内にはさまざまな文様があらわされ、しかしその丸文は初めから配列を考慮して描いていったものではなく、順次連ねていったために、最後には他の丸文と重ねて描かれていて、そうしたところに形式的でないおもしろみが感じられます。裏文様は、三方に槍梅の折枝文を染付であらわし、花に赤、葉には緑の上絵を点じています。さらに、高台内には二重円圏内に「福」字銘が書されていますが、その銘は他の古九谷様式の作品に比べて、画の少ない字形ですのも特色であります。高台内に釉をかけ残した部分があり、土膚を見せています。