銹絵染付金銀彩松波文蓋物

銹絵染付金銀彩松波文蓋物
Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話
銹絵染付金銀彩松波文蓋物
銹絵染付金銀彩松波文蓋物

Kenzan: covered bowl with pine and wave design, underglaze brownand blue, overglaze gold and silverMouth diameter 20.8cm Idemitsu Art Gallery
高さ6.3cm 口径20.8cm 蓋径23.0×23.7cm 出光美術館
 光琳の落款はありませんが、蓋表の松の絵や内面に描かれた波の文様は光琳派の作為を強くうかがわせ、特に内面の波文様は光琳の筆ではなかったかと思われます。
 いかにもざんぐりとした撫角の蓋物で、被せ蓋になり、底もまるく作られ、信楽風の土味ですが、黒谷合土を用いたものと思われます。蓋表から身の側面にかけては白泥と呉須の混じった鉄絵具で松の絵を下絵付し、透明釉をかけて焼き上げた後、さらに金と銀で松の絵を重ねていますが、銀彩は薄かったためか判然としません。蓋、身とも内面は白化粧下地に呉須で波文様を描き、透明釉をかけて焼き上げた上に金彩を加えています。その波の描写はやわらかく伸びやかであり、ことに波頭の点描は光琳の筆意をうかがわせるものがあります。
 外底は土見せで、中央に 「乾山」の二字を大きく書しています。
 このように絵画的風韻の高い陶芸は他に見ないものですが、それは光悦、宗達以来の装飾性を受け継いでいる光琳、乾山の作風の大きな特質であり、乾山焼の面目ここにありの感じがします。

前に戻る
Facebook
Twitter
Email