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鶴田 純久の章 お話

Ink slab in the shape of hōshu (sacred pearl) Excavated from Kurozasa No.3 Ceramic Kiln, Miyoshi-machi, Aichi. 8th century. Diameter 14.5×18.4cm.Honda Collection.
愛知県みよし市大字福谷字根浦黒笹3号窯出土
8世紀
高さ2.8cm 径14.5×18.4cm
本多コレクション
 古代の硯はほとんどがやきものであり、基本的には円面硯と風字硯の二形態があります。正倉院の風字硯についてすでに記したように、奈良時代には円面硯が、平安時代には風字硯が大勢として用いられました。この両者の過渡期に本器のごとき、平面が宝珠形をなす特殊な硯が、主として猿投窯において焼かれています。肉厚の粘土板をで削って成形しており、じつに端正な形をしています。海と陸の境にも連弧の場を設け、頭部の形と対応させている心づかいは見事です。
 底には後部に五角形の低い脚を二箇所につけて、器面を傾斜させています。内面に円形の器物の重ね痕があり、裏面には濃緑の自然釉が被っています。当然のことながら、墨のする面を保護するために、器物の上に伏せて焼いたものです。惜しくも二つに割れていますが、よく完好な形を保っています。宝珠硯にも若干の変遷があり、10世紀末まで焼かれましたが、本器は宝珠硯として最古のものであり、8世紀末ごろの作と考えられます。

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