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鶴田 純久の章 お話
越前 大甕
越前 大甕

Echizen ware: large jar. Excavated at Ono-shi, Fukui. Dated Genkō 3 (1323). Height 60.1cm.
Hakone Art Museum.
福井県大野市出土
元亨三年(1323) 銘
高さ60.1cm 口径51.7cm 胴径66.0cm 底径23.4cm
箱根美術館
 鎌倉時代の越前大甕ほど常滑大甕と近似したものはありません。口縁帯の形状、肩の張り、小さい底部などその形姿から受ける感じは全く常滑そのものであり、実物に接しないことには区別できないものが多いです。越前陶の成立が常滑の技術導入にあることを考えれば当然でしょう。わずかに土の相違、肩に施された窯印が両者の違いを示しています。鎌倉時代後期に入りますと、口縁帯に違いが出てきます。この時期の常滑大甕の口縁帯は折り返しの幅が広くなりますが、越前のそれはN字状に垂れ下ることはありません。この縁帯は本来甕の口縁の破損を防ぐためのものですから、耐火度の高い陶土を用いた越前陶の場合、口縁帯の幅をそれほど広くする必要はないわけです。この甕は鎌倉期越前大甕の数少ない一つであり、肩に釘彫りで「元亨三年□月廿九日」 と紀年銘を施しています。鎌倉時代末期の越前大甕の唯一の基準資料として貴重なものです。肩の別の面に七条の縦引き刻線による窯印が二つ並んで施されています。

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