Shigaraki ware: jar. Perhaps excavated in Shiga. Oan 2 (1369). Height 28.7cm.
伝滋賀県甲賀郡中世墓出土
応安二年(1369) 銘
口径24.9cm 胴径28.2~29.2cm 底径15.5~16.7cm 高さ28.7cm
広い縁帯をもった大きな口からそのまま肩に続き、胴中央でくの字形に屈曲する、いわゆる算盤玉の形をした小甕です。ほとんど直線的ともいえる胴の形は広い口と相俟って一種のきびしさを感じさせます。成形は紐土づくり四段継ぎで、口縁は大きく折り返されて内気味の広い縁帯をつくっています。長石や珪石を多く含んだ信楽独特の土味を示し、焼成温度はさほど高くありませんが、赤い火色がよく出ています。胴上半に墨書銘があり、右縦書きで、応安中延口と読めます。応安は応安二年(1369) 室町初期、足利義満の時代に当たります。他にまだ文字がありそうですが、薄くてよく読めません。
いわゆる算盤玉形の胴形は各地の中世陶器を通じて広く見られ、南北朝時代から室町初期の特色と考えられますが、ここに年代の知りうる新資料を得たことは編年上きわめて貴重といわねばなりません。
滋賀県甲賀郡内の中世墓より最近出土したといい伝えており、蔵骨器として使用したものと考えられます。