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鶴田 純久の章 お話
備前 細水指
備前 細水指

Bizen tall cylindrical water jar
高さ20.1cm 口径11.4cm 底径11.3cm
 口縁や肩の稜線は鋭いが、筒形に立ち上がった器形は作為がなく素直でしょう。口辺に二重の線彫りをめぐらし、裾回りに面面取風に箆を回していますが、それは轆轤から収りはずすときに加えられたもので、備前焼には裾に箆を回したものが多い。前後に一部赤い土膚があらわれ、他は灰をかぶって暗い灰青色と黄褐色にむらむらとこげて、渋く詫びた趣の景をなしています。平らな底には小さな「十」の印が刻されています。
 かつて松平不昧公の所持していたもので、箱の蓋裏に「この備前水指ハ 元京広沢仁右衛門所持なりしを 京商人出入の竹屋喜助取次き 雲州公へ五百両て納む 雲州家伝来」と記されています。幕末文化年間頃に五百両であったというから、当時極めて声価の高いものであったのでしょう。不昧公は細水指として用いていますが、前後にかん付穴を埋めた跡が残っていますので、当初はやはり掛花生として作られものと思われます。

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