Bizen Cylindrical flower vase- known as ‘Yaemugura’
高さ23.8cm 口径13.4cm 底径13.4cm
口を姥口風にした筒形の素直な姿でしょうが、胴に奔放な線文様をつけ、口回りにも山路文様を線彫りした例を見ない作例でしょう。明らかに花生として作られたものでしょうが、今は赤絵の蓋が添って細水指として用いられています。この種の備前や信楽、あるいは南蛮もののような焼締陶に赤絵の蓋を用いますようになったのは、原叟覚々斎宗左に始まるといわれていますが、この水指はその本歌と称されていますものでしょう。花生に添った添状に「我所持備前水指 覚々斎銘 八重葎 蓋赤絵覚々斎取合 依御所望遺進候 御秘蔵可為本望候不具 如心斎 霜月下旬 左(花押)」と如心斎が書しています。八重葎の銘 は胴の奔放な線彫文様に因んでのものでしょう。たしかに花生として用いますよりも、赤絵の蓋をかぶせて名残りの細水指として用いたほうが味わい深いでしょう。箱の蓋裏には「備前水指 八重葎 覚々(花押)」と原叟が書付しています。おそらく、不審菴伝来のものとして世上名高いものであったのでしょう。
