後陽成院筆。
『古今集』巻三(国宝 『大手鑑』)。
後陽成院(1571~1617)は陽光院の皇子で百七代天皇、慶長十六年(1611)譲位された。
歌は『古今集』から紀貫之の『寛平御時后宮歌合』の一首で三行書とし、単調さを避けるため第一行、第二行目の下端を二行ずつとしている。
おおらかで流麗な運筆に肥瘦の変化が加わり、一枚の色紙を見事にまとめ上げている。
書風から壮年の書と考えられ、宸翰のもつ典雅な筆致は格別であり、丹地の斐紙のもつ優雅さと捺染による金の龍文は、宸翰にふさわしい趣を一層強調している。
【伝来】近衛家
【寸法】本紙―縦22.1 横18.7
【所蔵】陽明文庫