小肩衝

唐物　大名物　男爵　岩崎小彌太氏藏

名稱
形の小振なる肩衝なり。

寸法
高　貳寸參分
胴徑　壹寸九分参厘
口徑　九分
底徑　壹寸
甑高　貳分八厘
肩幅　參分
重量　拾六匁五分

附屬物
一蓋　二枚　袋箱懸子に入る
窠蓋　休味作　織部好
木口蓋　立古作　肯山公好
（備考）背山公は伊達綱村の諡號なり、享保四年十月一日歿す、年六十。
一御物袋　白縮緬緒つがり白
小肩衝
一袋　四ツ
紺地金襴龜甲紋　裏黄かいき　緒つがり紫
廣東織留　裏玉虫　緒つがり紫
もうる　裏紅かいき　緒つがり紫
茶地古金襴　裏紋かべちょろ　緒つがり藤色
一袋　桐　白木
小肩衝袋四　蓋一
一挽家　花琳　金粉字形
小肩衝　書付　小堀權十郎
袋　糯子地金入　裏縞茶宇　緒つがり茶
一內箱　桐　書付黑漆　小堀權十郎
小肩衝
一添盆　菊折枝模樣　黑四方盆
徑五寸五分　鏡徑三寸九分　底徑四寸七分　高さ六分貳厘
包物　和蘭木綿　裏茶地海氣
箱　桐　白木
小肩衝盆菊折枝
一總箱　桐　春慶塗　金粉字形
小肩衝

雜記
小肩衝　唐物　大名物　松平陸奥守。袋三紺地金襴龜甲紋　裏玉虫海氣、かむとう織留　裏玉虫絹、もう類　裏かべちょろ。挽家果李書付小堀權十郎。袋しゆす地金入　裏島茶宇。外箱桐。盆添黑四角唐蒔絵菊（茶入圖あり）。　（古今名物類薬）
小肩衝　松平陸奥守所持。元文四己未年七月二日借來一覧。袋四ツ、紺地金らん龜甲紋　　裏玉虫かいき、織留かんとう　裏茶丸玉虫、もうる　　裏かべちょろ、蜀錦　裏玉虫かべちょろ（其他附属物の記事、古今名物類楽に同じ、茶入圖あり）。　（名物記）
小肩衝唐物　松平陸奥殿。　（玩貨名物及び古名物肥）
伊達政宗　松平陸奥守　慶長四年東照公より小肩衝茶入をたもふ。　（寛政重修諸家譜）

傳來
慶長四年、徳川家康より仙臺藩祖伊達政宗の拝領せるものなり。天保の頃樋口肩衝、木葉猿、灰被等と共に大阪なる仙臺家金方炭保に預けられしが、毎年曝凉の節は仙臺家より使者を炭保方に出張せしめたりと云ふ。維新後、樋口肩衝と共に岩崎家に納る。

實見記
大正九年十一月四日東京市芝區高輪南町岩崎小彌太男邸に於て見す。
口縁粘り返し稍深く、甑廻りに沈筋一線あり、
肩ツ力リと衝き、胴より腰に掛けて次第に張り、裾より以下フックラと丸味を持ちて窄まり、土は鼠色にて、絲切細かく、起點に喰違ひあり、又小さきホツレ及びヒッツキ各一ヶ所あり。總體黒飴釉光澤麗しく、胴に轆轤淺く縒り、置形共釉に黄色を帯びたる一ナダレ、肩先雙方よりなだれ合ひて、盆附に至りて止まる、此ナダレに向って左手にも同様一ナダレあり、又胴に茶入三分の二に亙る稍太き沈筋あり、置形に向って右手に柿金氣色の釉肩先より裾廻りまで掛り、胴紐下に黒飴色にて縁取りたる柿金氣ヌケあり、又置形の右手に同じく黒飴にて縁取りたる青釉ヌケありて、此茶入に一段の景色を添ふ。内部口縁釉掛り、以下轆轤目繞り、底中央渦狀を成す。總體飴色釉光澤物を鑑すべく、黄釉青釉柿色交錯して景色の變化名狀す可らず。唐物小肩衝は極めて稀有なるが中にも、是れは釉色共に殊勝にして、彼の富士山肩衝と相拮抗するに足れり。口縁より飯際まで細きヒヾキ一線あるのみ、其他無疵。