



黄河
大瀬戸 伯爵 酒井忠道氏所蔵
名称
茶入の袋に添えられた札(附札)に「勅銘(天皇による命名)」とあり、箱の裏に貼られた色紙には「千代の秋のなかはにすめる河の名や、うすきもみちの色をかるらん」と書かれています。これは天皇の直筆(宸筆)であると思われます。歌の意味は、五百年に一度澄むと言われる「黄河」の名を詠み込んだもので、茶入の色合いを黄河に見立てて命名されたものでしょう。
寸法
高さ:約6.67 cm(2寸2分)
胴径:約6.36 cm(2寸1分)
胴回り:約20.60 cm(6寸8分)
口径:約3.03 cm(1寸)または場所によって約2.42 cm(8分)
底径:約3.94 cm(1寸3分)
甑高(首の高さ):約0.61 cm(2分)
肩幅:約0.82 cm(2分7厘)
重量:約132.75 g(35匁4分)
付属品
・蓋:1枚
・御物袋(おものぶくろ):紫色の縮緬(ちりめん)の袷(あわせ)、紐(緒)の結びは紫色。
附札には「勅銘黄河御茶入」「黄河」とあります。
・袋:1つ
赤地に雲形の模様の裂地(きれじ)、紐は藤紫色、玉虫色(大燈切という名物裂に似ています)。
・袋箱:曲物(まげもの)、内側に布が貼られています。
蓋に「黄河御茶入袋」という貼り紙があります。
・挽家(ひきや、木製の容器):タガヤサン(鉄刀木)製。
「黄河」とあり、甲(蓋の上面)に金粉が施されています。
袋は白地の金襴(きんらん)。
・箱:桐の白木箱。
「大瀬戸 銘黄河」の貼り紙があります。
蓋の裏にある色紙の内容は以下の通りです。
「千世のあきの なかはにすめる 河の名や うすきもみちの 色をかるらん」
天皇の直筆(宸筆)と伝えられています。
実見記
大正8年(1919年)4月28日、東京市牛込区矢来町の酒井忠道伯爵の邸宅にて実際に拝見しました。
解説・特徴
大瀬戸(瀬戸焼の茶入の一種)。口は締まっており、口縁部(玉縁)の4ヶ所に小さな修理の跡があります。濃い黄色、あるいは赤褐色(丹地)に見えるほどの色合いで、肩が張り(肩衝)、胴も張っています。胴には轆轤(ろくろ)の目が3段めぐっており、濃い黒釉が細い滝のようになだれ落ちています。釉薬の景色(置形)は裾の土にまで達しており、釉溜まり(釉薬が厚く溜まった部分)は厚くなっています。裾から下は鉄分を含んだ土の色で、糸切(底の仕上げ痕)はやや荒く、頑丈な作りです。底面には、大きな虫が喰ったような土のほつれ(欠けや凹凸)があります。
【原文】
黄河
大瀬戸 伯爵 酒井忠道氏 蔵
名称
茶入袋の附札に勅銘とあり箱裏に張りたる色紙に「千代の秋のなかはにすめる河の名や、うすきもみちの色をかるらん」とあるが宸筆なるべし、歌意は五百年河清を待つと云ふ黄河の名を詠み込まれたるものにて、茶入の色合を黄河に見立てゝの命名ならん。
寸法
高 弐寸弐分
胴徑 弐寸壱分
胴廻 六寸八分
口徑 壱寸又所によりて八分
底徑 壱寸参分
甑高 弐分
肩幅 弐分七厘
重量 参拾五匁四分
附属物
一 蓋 一枚
一 御物袋 紫縮緬袷 緒つがり紫
附札に [勅銘黄河御茶入] 黄河
一 袋 一つ
赤地雲形模様切 緒つがり藤紫 玉虫 (大燈切に似たり)
一 袋箱 曲物 内に布を貼る
蓋に張物 [黄河御茶入袋]
一 挽家 鉄刀木
黄河 甲に金粉
袋 白地金襴
一 箱 桐 白木
[大瀬戸 銘黄河] 張紙
蓋裏に色紙次の如し
千世のあきの
なかはにすめる
河の名や
うすきもみちの
色をかるらん
宸筆と云傳ふ
實見記
大正八年四月二十八日、東京市牛込區矢来町酒井忠道伯邸に於て實見す。
大瀬戸茶入、口締り、玉縁四ヶ所小さき繕ひあり、濃黄或は丹地と見ゆるばかりの色合にて、肩衝き胴張り、轆轤目三段廻り、濃き黒釉細き瀧の如くになだれ、置形裾土にかゝりて釉溜厚し、裾以下鉄気色にて糸切稍荒く、頑丈作りにて、底面に大虫喰様の土ホツレあり。

