陶磁器を焼成する際、その器物を保護するために耐火粘土製の容器内に入れて窯内に積み込んで焼きます。
その容器をさやと通称しています。
尾張・美濃（愛知・岐阜県）地方ではエンゴロといいます。
「匝鉢積」品物を匝鉢に入れて積み重ねる窯詰法を匝鉢積といいます。
匝鉢は焼成火度に十分耐えられるように耐火粘土でっくり、入れる品物の形状や大きさによってその形状・大きさも工夫されます。
上等品は直接匝鉢の上に置かないで、耐熱性の台を置きその上に品物を置きます。
これは匝鉢は十分熱に耐える筈でありますが、なおその荷重・熱などによって多少の歪みをきたすことがあるためであるでしょう。
窯詰の方法によって窯詰の容量が大いに変わり経済的に関係しますので、陶業家は常にこれについて種々の工夫を凝らし、厘鉢の形状や詰め方によって焼成経済を図っています。
また素地の形状と厚さによって歪みを防ぐために種々の方法を講じています。
例えば肉の薄い碗などは上向けて焼くと歪みやすいため共土（素地と同一の土でつくったもの）の台の上に伏せ、袋物などは口の部分の歪みを防ぐために共土の台をその口に合うようにつくって嵌めて焼きます。
細長いものは釣焼といってその尖端に吊して焼き、また釉薬が流下して下に熔着するのを防ぐために別の台で受けて焼くなど種種の工夫をします。
匝鉢に詰めて窯内に入れる時、経済的にはその間隔を狭くするのを得策としますが、あまり狭くしすぎると火の廻りが悪く熱の不均等をきたしますので、窯の構造と焼成する品物の性質によって適度に並べる必要があります。
「厘鉢の性質」厘鉢は熱に耐えることを必要とすると同時に、焼成に際して収縮しないことおよび熱の急変に対して強いことが必要であります。
匝鉢が熱に耐えられなければ、半熔した素地は湾曲してもとの形を保持できないようです。
収縮が大きいと窯中で焼成中に倒壊する危険があります。
また熱の急変に対して弱く、火入の際および焚上後の冷却に際して破損し内容品を損じます。
それゆえ厘鉢の原料はこれらの条件に適合するように注意すると同時にその原料は一度使用火度以上に焼成して収縮しないものにしてから使用します。
この粘土を一度焼成して粉砕したものをシャモットだけでは粘性がなく成形不能ですので、接合材として粘土を最小限度に加えます。
また熱の急変に対する抵抗性に対してはシャモッ卜粒の大きさを種種研究します。
匝鉢は破損しなければいく度でも使用できるが、高火度に対しては使用命数が短いです。
破損した匝鉢は再び粉砕して少量の粘土を加えて再製できます。
最近では陶磁器工業の発達と共にいろいろと新しい材質のものができてその要求を満たしています。
中でもコ一ジライト系のものなどはすでに一般化されています。
