蕎麦釉のある陶器。
朝鮮茶碗に蕎麦井戸または蕎麦糟または単に蕎麦と称されるものがある(「蕎麦」の項参照)。
また中国産のものでわが国で蕎麦手と呼ぶものがあります。
すなわち廠官窯といわれているもので、中国南方系の中国固有の釉の改良発達したものであります。
その釉中の鉄珪酸塩が黒味を帯びたのを鰭魚緑、緑色を帯びたのを茶葉末児といいます。
前者はわが国でいう黒蕎麦で、明朝成化年間(1465-87)に逸品を出し清朝康煕(1662-1722)官窯でもこれを模しました。
後者は清朝雍正年間(1723-35)に好果を挙げたもので、それより廠官窯の名があります。
乾隆年間(1736-95)の所製に結晶がこまかく無晶の緑地のようにみえるものがあります。
これを蟹甲青と呼び蕎麦手中の最上とします。
俗に青蕎麦というのは多く雍正・乾隆頃の製であります。
雍正蕎麦手の胎土は鉄骨でありますが、乾隆のそれは淡黄色の砂胎であります。
(『支那骨董詳説』『匋雅集』)※そばぐすり