長石群には岩土・珪酸・アルカリから成るアルカリ長石群と、岩土・珪酸・アルカリ土類から成るアルカリ土長石群とがあります。
窯業においては単に長石というのは正長石(カリ長石)を指す原料名として慣用されています。
莉‥長石(ソーダ長石)と灰長石とはすべての割合に溶解して固溶体をつきます。
長石および長石質岩石は相当多種で、いずれも陶磁器における主要原料でありますが、わが国に産する長石は正長石と曹長石が最も多いようです。
窯業原料としての長石は、特に陶磁器原料としてはアルカリ含有量や鉱物構造の差異は決定的な要素ではなく、最も大切なことは混在する不純物すなわち石英・雲母・柘榴石・電気石・角閃石・チタン鉱石などであります。
石英が10パーセント内外混入してくると熔融温度が低下し、特に熔液の粘度が急激に小さくなります。
磁器に最も大切な長石は正長石でありますが、このアルカリの一部はソータ・カルシウム・鉄で置き換えられているものが多いようです。
一般に使用されているものは酸化カリウムとして32パーセント内外であります。
摂氏1200度位の焼成温度で白色の多泡性ガラスとなり白榴石を分離します。
気泡に存在するガスは大部分が水蒸気で摂氏800~900度でほとんど放出されます。
酸性ガスは摂氏500度で出始め摂氏600~900度で出てしまいます。
長石中の酸化カリウムが多くなると熔融温度は高くなり、熔けたガラスの粘度は大きくなります。
石灰は正長石の熔融温度を著しく低下させます。
磁器素地中の正長石と曹長石との性質に及ぼす影響は、正長石中のソーダ量が多くなると収縮率と透光度が増加し、両者を等量用いると反作用が起こります。
透光性からみると正長石、正長石十曹長石、曹長石の順となり、焼成収縮はこの逆で高ソーダ長石素地が最も少ないようです。
機械的強度は長石の種類よりもむしろ熱処理と成形方法とに影響されます。
熱膨脹率は曹長石素地が最も大きいです。
釉薬における長石の作用は素地におけるのと類似します。
この場合は微粉砕しなければならないようです。
正長石も曹長石も同じように使用されるが正長石の方がシリカを一層よく熔かし、得られる釉の耐久性が大きくなります。
(『セラミック原料』)