瀬戸茶入の一手。
土は薄赤色に少し黒味があって小砂が混じったようであります。
糸切はこまかく見事で、口造りの捻り返しがよいです。
地釉は濃柿色、上釉は濃淡のある黒釉であります。
鶏手の名の起こりは、小堀遠州が江戸にいた時、ある旗本の茶会にこの茶入を自慢して出しました。
というのは客人の中にこの手の茶入を所持している人がいたからであります。
客人と亭主が互いに優劣を論議したのちその場に取り寄せて引き合わせてみますと、客人の茶入がはるかに勝っていました。
そこで遠州は即座に思い付いて鶏と名付けたといわれます。
合わせてみると優劣があるという意味であります。
一説には元来竜田の神職の者が所持していた茶入なので鶏というとします。
(『茶器弁玉集』『万宝全書』)