中興名物。後窯茶入、新兵衛作。
その名のようにいかにもうち佗びた態で、佗び人が最も喜ぶものであるでしょう。
口は広く、瓢形で、胴中の両側に相対して輪違模様の打ち出しがあるようで、胴以下に斜めに四本の筋が打ち違った四ッ目垣のような箆目かおり、また胴廻りに暦のような凹んだところがあるようで、裾以下は鼠色の土を見せ手握ねのようにでこぼことしています。
一部に糸切が見え、この糸切を挾んで甫七の彫銘があります。
総体の黒釉の上に口縁より黄釉がなだれ、密陀漆のような色をなして古雅の趣はいうにいわれないようです。
宗甫(小堀遠州)の好みで、新兵衛に七個焼かせたものの中の一つであります。
のち神尾大和守に伝わり、安永(1772-81)頃松平不味に入りました。
(『名物記』『古今名物類聚』『麟1亀龍』『大正名器鑑』)