Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話
色絵玄猪香合
色絵玄猪香合

Ninsei: incense caddy in the shape of gencho (an Imperial seasonalgift), enamelled wareDiameter 7.2cm
高さ3.4cm 口径5.9cm 左右7.2cm 底径6.5cm
 仁清の作品の大きな特色として、宮廷に伝わった有職故実にのっとった意匠のものが多い。この香合は俗に玄猪包香合と呼ばれているが、玄猪包とは旧暦十月上の亥の日に宮中で無病息災を願ってつかれた玄餅を畳紙で包み、その上に銀杏の葉をのせて水引で結び主上や皇后から下賜されたもので、その玄猪包みを香合としたものである。仁清の玄猪の香合をこれまでに二つ見ているが、この香合はほとんど知られなかったものである。
 やや厚手に作られ、身には緑地の上に金線描で籠目風の文様をあらわしているが、この緑地籠目文は、仁清が香合などの身によく用いている意匠である。外表全面にかかった白濁釉はやわらかく、仁清特有の釉膚であり、底は土見せで、中央部左方に仁清の印が捺されている。収められた箱の表に「仁清香合」 と書付され、添状によると「金森飛騨守入道宗和 箱蓋表書付 仁清香合トアリ正筆相違無之候也 古筆了仲」の極めがついている。金森宗和は明暦二年に歿しているので、もしこの箱書を宗和直筆と見るならば、明暦二年以前に作られたことになる。一般に、仁清には宗和箱といわれるものが多いが、どこまで宗和真筆といえるのかの判断はむずかしい。

前に戻る
Facebook
Twitter
Email