春山蛙声

真中古　柳藤四郎　中興名物
付属物
蓋二　窠
仕覆四
挽家　一　花櫚凹彫緑青入書付　小堀遠州筆
箱　桐黒掻合塗　金粉文字　書付　小堀遠州筆
伝来
小堀遠州―土屋相模守―松平主殿頭一姫路　酒井家―益田鈍翁
所載
名物記　吉益鴻焉著　茶入図解　遠州百会記　小堀御遺物道具　小堀家御道具外出留帳　編者不詳　享保十一年覚書　松山青柯著　つれづれの友　東都茶会記第一輯上　大正名器鑑
寸法
高さ：5.8cm　口径：3.0cm　胴径：7.1cm　底径：4.2cm　重さ：140g

　この茶入は春山蛙声とよむ。挽家と箱書に割り書きとして銘としたものである。
　真中古の窯は、黄瀬戸釉をはじめたと伝えるが、茶入に見るのは稀で、ただこの茶入のみである。
　形は平肩衝で、正しく整いがあり、品格をそなえている。釉はすべて黄色水釉で、ロぎわ肩筋、釉裾に黒くたまって珍しい景色を見せている。土色白くこまかい瀬戸窯の味わいをあらわしている。形、土、釉ともに、他に類を見ないもので、後世桃山期に出てくる黄瀬戸の先駆をなすものではなかろうか。
　仕覆は四つ。いずれも遠州色の基調をしめしていると思われる。