黒釉の一部を窓抜きにし、さらに一部に文様を白抜きにしています。斬新で近代的な意匠です。日本の茶道は、初期には唐物崇拝に始まり、天目・青磁などが愛用され、やがて佗び茶の誕生とともに、渋い趣ある高麗茶碗に好みが移り、佗び茶の完成期には、利休による楽茶碗が彼の茶の美学を代弁しました。
利休ののち天下の茶匠となった古田織部(1544-1615)は、動乱の桃山期を生きた武将茶人でしたから、その好みとするところは動的で活力のあるものでした。
意匠にも技巧をこらし、異国風・幾何学的文様・写生風のものと種類が多いです。この茶碗はそうした織部の近代的な工芸美をそなえ、桃山後半期の「茶」のあり方を象徴しています。