唐津焼茶入。
中興名物。
思河は筑前国筑紫郡にあって、また逢川とも漆川とも呼ばれます。
古歌に思初川、思川とありますので、小堀遠州が『壬生集』家隆の歌「思河まれなる中に流るなりこれにも渡せの橋」に因んで命銘しました。
箱蓋裏には遠州筆で引歌が記されています。
この茶入は唐津窯としては轆轤立ちのゆるやかな肩衝形で、肩の少し下がったところでやや窪み、後腰のところで少しふくらみ、畳付では山路状に強い一箆がめぐっています。
総体に明るい木の葉色の釉のところに、黒褐色のなだれが一筋下がって見事な置形をみせます。
また反対面にもこのなだれよりやや短いなだれがあります。
底は円座式です。
唐津の茶入で、中興名物の選に入ったのは大変珍しいですが、大佗びで、茶味の豊かなこの茶入は、またよく遠州の好みを現しているといえましょう。
二つの仕覆はとり合わせよく、ことに松平不昧も愛蔵していたものと思われます。
『古今名物類聚』『麟鳳亀龍』『茶器目利集』などの諸名物記のほか、文化十二年二月の大円庵茶会に登場していることが記録。
【付属物】蓋 蓋箱―桐白木、書付松平不昧筆仕覆―二、白地小牡丹古金襴・清水裂(図版右より) 仕覆箱―桐白木、書付同筆家花櫚挽家仕覆いちご錦 内箱 桐黒掻合、朱塗書付小堀遠州筆、蓋裏朱塗書付同筆 外箱 桐白木 極箱 桐白木、書付松平不昧筆
【伝来】松平備前守定章 加州小堀平右衛門松平不昧
【寸法】 高さ:8.6 口径:3.3 胴径:5.9 底径:3.7 重さ:115
【所蔵】畠山記念館