萩焼は藩主毛利輝元が連れ帰った朝鮮の陶工李敬が、慶長九年(1604)に萩の松本で開窯したのが創始とされています。伝世しているものは井戸・熊川・粉引など、高麗茶碗を模した茶碗や水指などの雅陶がほとんどですが、初期の発掘破片には小皿・摺鉢などの雑器もみられ、釉も藁灰釉や鉄釉が多く、叩き手法の造形などの点からも、古唐津との関連が強く示唆されています。その後は茶陶専門の窯として数多くの名品を生みました。この茶碗は井戸茶碗を写したもので、素直な造形、枇杷色の釉、竹の節風の高台など、本歌に迫る名碗です。初代高麗左衛門(李敬)の作と伝えられます。《寸法》高さ8.7 口径16.8~17.2《所蔵》逸翁美術館