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鶴田 純久の章 お話
二彩瓜文平鉢
二彩瓜文平鉢

高さ6.0cm 口径33.0cm 高台径19.4cm
東京国立博物館
 内箱の蓋裏に「長次郎作 鉢 獅子二牡丹置上 楽伝来 左(花押)」と如心斎が書き付けています。楽家に伝来したものではありますが、何か故あって鴻池家に移り、その当時に如心斎が書付したものと思われます。口造りを錬状にした平鉢で、峻轍を用いず手挫ねで成形したことは、高台内に残っている指跡などからうかがわれます。全体に厚造りで、ことに底回りは分厚く、茶碗よりもややきめの細かい赤土が用いられています。見込に瓜の実二つと葉、蔓などをのびやかに線彫りにし、鐸状の縁は十二に区割して、内に獅子と牡丹の型抜浮文様を交互に貼りつけていますが、牡丹は交互に上下させています。瓜には黄褐色柚、地には緑柚、縁も黄柚と緑柚をかけ分けていますが、それは交趾焼の技法を倣ったものであることは明らかであり、「とし六十 田中 天下一宗慶(花押)文禄三年九月吉日」と銘のある「三彩獅子香炉」(図91)と極めて類似した柚調であり、また獅子牡丹の置上は、東京国立博物館蔵の常慶印「褐釉獅子牡丹置上香炉」(図97)と同様の型を用いたように思われます。とすれば、この平鉢は宗慶、常慶はもちろん長次郎、宗味ら、いずれの作ともいえるもので、常慶以前の初期の聚楽焼ではこの種の二彩、三彩などいわゆる交趾焼風のものが焼かれていたことを実証する貴重な資料の一つです。

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