彩釉陶器 さいゆうとうき

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鶴田 純久の章 お話

奈良時代の最も特色あるやきもので、鉛釉を施したものです。
これには緑・褐・白の三彩、緑白・緑褐の二彩、緑・黄・白の単彩などがあります。
これは正倉院文書から知られるように、金属鉛を加熱してつくった鉛丹に白石を加えた鉛ガラスに近い基礎釉に、緑青を加えたり(緑釉)、赤土を加えたり(黄釉)してつくった釉薬を、軟質の器胎に施したものであって、唐三彩の影響を受けてつくったものであります。
百済にはすでに六世紀に緑釉単彩があるようで、わが国でも奈良県の川原寺出土の緑釉波文博のように七世紀にさかのぼると思われるような資料があるので注意されましょう。
最近この彩釉陶器の出土遺跡が著しく増加し、ほとんどわが国の全域にわたって二百ヵ所余りに及んでいます。
そのうち奈良時代に属するものが三十ヵ所ありますが、その過数半が畿内に集中しています。
これは畿内の中枢部における特殊物であるようで、貴族・寺院など上層階級の独占的な使用物でありました。
したがって恒常的な生産体制があったわけでなく。
中央政府の特殊な目的に基づいてその時々に官の工房で必要数だけつくられたものであります。

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