不透明な磁邸を用いた昔風の七宝焼であります。
元来七宝の材料である磁廓は不透明の軟質ガラスでありましたが、進歩して半透明となり、近代になってさらに透明質の製作が現われました。
奈良正倉院の御鏡の七宝でもすでに半透明の磁部質を用いていますが、普通の七宝は近代に至るまで概して泥七宝でありました。
泥七宝はだいたい粗物の感じがして、金属との境が密着せず、また研磨が不十分なため凹凸などがあり特に光沢に乏しい感があります。
しかしその温厚で趣味豊かなところはあたかも古陶器に近く、これに比べて半陶明の近代七宝は磁器趣味といえるでしょう。